3つの幼稚園のお話。その1。
娘が3歳になり、新しい街にも越したので、幼稚園を探すことにしました。
1つ目に試した幼稚園は、日系幼稚園。先生方が毎日たくさんの細やかな準備をしてくださるおかげで、とても良い学校でしたが、日本的だなと感じたのは、「先生のお話を良く聞ける子が良い子」と見なされる点です。
そんな環境にいると、賢い子どもたちは次第に「皆と同じように合わせて」また「叱られないように」行動するようになります。娘もその幼稚園ではとにかく大人しく、でもさっさと行動して、注意されないように努めている様子でした。娘は英語の方が得意で、がんばって日本語でお話しすると、「ことばの発達が遅いのではないか」などと心配されてしまうため、できるだけ話さないようにしていたようです。日本語のシャワーを浴びられることは素晴らしいけれど、娘の性格には合わないのかな・・・と考えていたある日、こんな電話がかかってきました。
「エマ(娘の名前)ちゃんは、お友だちに比べて、肌の色が黒いですね。黄疸などの病気ではないでしょうか。血液検査を受けて結果を報告してください。」
(ちなみにこちらアメリカでは、こどもの肌の色を黒いと表現したり、ましてやそれを病気などと表現するなどということは、決してあってはならないことなのです。)
私はできるだけ冷静になり、「これは彼女の生まれ持った個性です。つい先週健診にいき、血液検査も受けましたが、医師からそのような指摘をされたことはありません。」とお話しましたが、「保育士の目を信頼してください。私は昔、生徒の足の障がいを発見して、とても感謝されたことがあるんですよ。保育士は時に、親御さんや医師でも見抜けない病気を見つけられるものなんです。」と返されました。
「そうですか。では、医師に連絡とってみます。ところで先生、日本人でも、肌の色は一つではないのですよ。生まれつき濃い人だっているではありませんか。」とお話したら、「えー!?そうなんですかー?私は良く知りませんけれども。失礼なことだったらごめんなさいね。」と。その日娘を迎えにいった夫も、同じことを言われ、「僕と同じ肌の色ですけれど。産まれたときからそうですが。」と話したけれど、「病気の可能性があるから血液検査を」ときつく言われたそうです。
私は、自分の感性がおかしくなったのかと思い、とりあえず、アメリカ人の担当医や他校の先生に相談したところ、「ええええええ!!!!信じられない!それはハラスメントだ。こんなに健康でかわいい子どもを、どうしてそんな風にみることができるのか!」と、皆さん一緒になって言葉を失い、ショックと憤りを共有してくださいました。ところが、日本人の他の保護者の方に相談したら、「まあ、穏便にやり過ごせばそれでいいんじゃないですか。」とおっしゃいます。。。日本社会ってこんな感じだったかもしれないなぁと思い出しました。
次の日、私の意思は固まりました。
「先生、娘の健康を心配してくださったことはありがとうございます。でも、子どもの前で、あなたの肌の色は黒い、病気じゃないか、なんて言ってはなりません。3歳でもちゃんと聞いて理解して、傷ついています。医師にはやはり、彼女は健康そのもので、検査など必要ないと言われました。
3歳の子どもに一番必要なのは、「あなたはそのままで素晴らしい」という眼差しだと思います。私が幼稚園に期待するのは、自己肯定感の育成です。親としては、娘が自分を好きでいてくれたら、日本語なんて話せなくても構わないのです。」とお話しして退園しました。
先生はとても真摯に謝ってくださいました。「日本人の間でなら許されるだろう」と、ちょっと調子に乗っていたところがあったと、正直にお話してくださって。それは私も分からなくもないですし、子どもの健康を心配してくれたことはありがたいので、感謝して、互いに気持ちよく勉強の機会を終えました。
私は子どもの頃、「学校の先生の言うことは絶対」という無言の圧力の中、学校に通っていました。ものすごい変な先生、おかしい先生もいましたが、それを訴える子どもの方が悪者扱いされるので、とにかく黙ってやりすごすしかありませんでした。おかげで学校なんて大嫌い、学校は我慢と抑圧の場だと思っていました。
つづく。
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